虚構新聞が多重化技術を紹介、あわや「誤報」に。

アインシュタインがその存在を予言した「重力波」が100年の時を超えて現実に観測された2016年2月12日、虚構報道界の大手メディアである「虚構新聞」が多重化技術を使ったニュース番組を虚構として報道し、あわや「誤報」となる事態に。

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■テレビ報道の中立性、2色化で対応 「停波」発言受け

https://kyoko-np.net/2016021201.html

虚構新聞より

虚構新聞(2016.2.12)より

 民間放送各社は、ニュース番組の報道内容が政府見解と異なる場合、テロップを赤と青の2色で重ね合わせて同時に放送する「2色テロップ」を採用する方向で協議していることが、12日までに分かった。視聴者はそれぞれの色に対応したメガネをかけることで、自分の好みに合った報道を受け取ることができる。

政府・与党は、政治的公平性を欠いた番組作りに神経をとがらせており、8日には高市早苗総務相が、放送法4条違反を理由に電波停止を命じる「停波」の可能性にも言及した。

現在、民放各社で話し合われている2色テロップは、このような「偏向報道」批判を受けたもので、報道内容が政府見解と大きく異なる場合、政府見解を赤、別見解を青で重ねて表示する。そのままでは二重に表示されるため見にくいが、あらかじめ配布する赤・青の2種類のフィルター付きメガネをかけることで、どちらか一方だけが読み取れる仕組みだ。

例えば、アベノミクスについて「着実に前進」が赤、「大失速」が青で表示されていた場合、青メガネをかければ「アベノミクス着実に前進」だけが、赤メガネをかければ「アベノミクス大失速」だけが画面に映る。また、ニュース音声も、同じキャスターが内容の異なる2種類の原稿とコメントを読み上げるアフレコ方式で対応。主音声と副音声から、それぞれの番組内容を聞くことができる。

協議に参加する民放幹部は「両論併記を物理的に実現する画期的アイデア」と自賛する一方、別の幹部は「停波を免れるには仕方がない」と苦しさをにじませる。

メディアと報道に詳しい京都大学メディア情報学部の坂本義太夫教授(3D論)は「「色眼鏡でものを見る」が慣用句でなくなる日が来るとは思わなかった」と話す。

 

…現実はSFを超えていました。とっくに。

2010年にはじめて発表された多重化映像技術は「色眼鏡」ですらなく、偏光メガネを使用しています。

2014年に公開された第4世代多重化付加し映像技術「ExPixel」は、市販のパッシブ3Dディスプレイを改造することなく、多重化映像を実現する技術で、手軽にHDMIケーブルを2本さすだけで多重化できるFPGAハードウェア化もされています。

(なお、NHK放送技術研究所と共同研究もしております)

メディアと冗談に詳しい神奈川工科大学情報学部情報メディア学科の白井暁彦准教授(工学・エンタテイメントシステム)は、『折角ですからここはExPixelを紹介した上で、「偏向報道」と掛けていただきたかったところです、非常に残念です』とコメントを述べています。

白井准教授は以下のような提案で虚構新聞に報道の是正を訴えました。

日付変わって、2月13日に虚構新聞側社主UK氏から声明が発信されました。

Laval VirtualとSIGGRAPHに向けた新作に取り組んでいる中、それを押しのけて抗議動画を制作していた研究室としては、残念。釈然としない「半虚構」となってしまいましたが、社会風刺の精神を評価しつつ、未来を塗り替えていくことを強く決意しました。

なお、一連の誤報を見守っていた映像ジャーナリストの西川善司氏は「せっかくだからエイプリルフール企画で使おう」とコメントしていただいております。

 

以下、多重化プレゼンで使用した画像を紹介しておきます。

画像のクレジット(telegraph.co.ukusni.orgLive2D

以下が、富士通SSLとの共同開発「PowerPoint Generator」によって生成された画像です。パッシブ3Dディスプレイで表示することで、片側の情報しか見えず、円偏光メガネをかけることで、隠蔽された側の画像を見ることができます。

スライド1 スライド2

ちなみにTwitterで公開された動画は、UnityをつかったExPixel Shaderを使って生成されています(さらに手がかかっている…)。

民法各社がニュース番組で停波に追い込まれる前に、エイプリルフール企画でも多重化技術が利用され、虚構新聞が訂正報道する日を祈っておりますが、先生は逆に燃えているようです。

3/1の「第5世代多重化」の発表に興味があるかたは、こちらのイベントにご参加ください。

■2016/3/1研究成果発表会「エンタテイメントシステム工学研究会」開催
https://blog.shirai.la/blog/2016/02/20160301/

(こちらが「誤報」にならないようにがんばります!)