プレスリリース:3Dディスプレイの新方式「2x3D」の開発に成功

2012年10月25日(木)
報道関係各位・プレスリリース:神奈川工科大学 情報メディア学科 白井研究室


【3Dディスプレイの新方式「2x3D」の開発に成功:2Dと3Dを同スクリーンで上映】


 急速に普及しつつにある3Dディスプレイにおいて,2Dで視聴したい利用者と3D視聴したい利用者が,同時に同じスクリーンで映像視聴することは不可能でした.この問題を意外な方法で解決した研究が公開されます.
 神奈川工科大学 情報学部 情報メディア学科 白井暁彦 准教授,谷中一寿 教授らは,3Dディスプレイにおける新方式を提案し,この度,一般に向けて初公開する.
 現在,映画・TV・ゲームを中心に急速に普及しつつある3Dディスプレイであるが,2Dで視聴したい利用者と3D視聴したい利用者が,同時に同じスクリーンで映像視聴することは不可能であった.
 本研究グループは,偏光投影型の3Dディスプレイとハードウェア的に互換性のある方式で,2Dで視聴したい視聴者と,3Dで視聴したい視聴者が同時に同じスクリーンを見ることができるディスプレイ方式「2x3D」(ツーバイスリーディ)の開発に成功した.
 従来ステレオ立体視は右目用映像と左目用映像をそれぞれ異なる偏光フィルタを装着した2つのプロジェクタから投影し,それぞれの光を打ち消す偏光フィルタを右目と左目にメガネとして装着することで成立しているが,「2x3D」では,偏光フィルタを通して観る必要があるのは右目用映像のみで,裸眼では左目用の映像が視聴できるように特殊な映像生成アルゴリズムを使用している.裸眼,つまりメガネをつけていない状態では2D映像として左目用映像を見ている状態.

【2x3Dによる視聴の様子:裸眼では左目用2D映像,眼鏡越しには右目用映像が見えており,二重像は見えない】

【2x3Dによる視聴の様子:裸眼では左目用2D映像,眼鏡越しには右目用映像が見えており,二重像は見えない】

この技術は,3Dディスプレイを利用した「多重化隠蔽映像」における長年の研究と,ゲームなどに利用される高速な映像生成のためのハードウェアとソフトウェア技術の融合で実現している.

「2x3D」が現在の映画館に普及すれば,2D/3Dをそれぞれ別の映写室で上映する必要がなくなる.これにより子どもや眼鏡使用者など,長時間の3D視聴に難がある利用者が気軽に同じ映写室で映画を見ることができるようになり,いつでも2Dと3Dを切り替えて,多人数が同時に視聴できる.映画館側のコストと映画視聴者側の両側において利益がある.また両眼に使用していた偏光フィルタが片眼で実現できるという利点もある.
動画による解説(英語):http://www.youtube.com/watch?v=8UMpx56lMT8

本研究は専門家向けに日本VR学会および国内最大のゲーム開発者会議であるCEDEC2012で発表している.CEDEC2012においては,参加者が選ぶ最高の賞である「インタラクティブセッション・大賞」を受賞した.
海外では11月末にシンガポールで開催される世界最大のCG・インタラクティブ技術の国際会議SIGGRAPH ASIA 2012において採択難度の高いデモ展示セッションである「Emerging Technologies」での採択が決定している.
NECディスプレイソリューションズ(株)を始めとする,国内外のディスプレイ関連企業・コンテンツ関連企業からの注目度も大きく,今後,産学連携を通した世界的な普及が期待される.
一般向け初公開として国内では10月25日~27日に日本科学未来館(東京お台場)で開催される「デジタルコンテンツエキスポ2012」においてNECブースにてデモ展示される(参加・体験無料).
▼本件に関する問い合わせ先
神奈川工科大学 情報学部 情報メディア学科 白井研究室
 〒243-0292 神奈川県厚木市下荻野1030
 担当:白井暁彦 TEL:046-291-3201 E-mail: [email protected] (プロジェクト直通)
[プレスリリースPDF]
画像はこちらのページからお使い下さい.
【関連論文(和文)】
“2X3D:2D+3D同時上映可能なハイブリッドシアター”, 第17回日本バーチャルリアリティ学会大会論文集, 2012年9月 
【関連論文(英文)】 Academic article in English
“2x3D: Real-Time Shader for Simultaneous 2D/3D Hybrid Theater”
ACM SIGGRAPH ASIA 2012 Emerging Technologies (accepted), Singapore, 2012
その他の多重化隠蔽映像「Scritter」に関連論文はこちら
【関連特許】
特願2010-206145「情報表示装置」 (出願日2010.9.14)