平成28年度「多重化による合理的配慮対応・教育用ディスプレイシステムの開発」

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平成28年度重点配分経費(研究)成果報告書

多重化による合理的配慮対応・教育用ディスプレイシステムの開発

配分研究費 (700千円) 1ヶ年

研究者名:所属学科 情報メディア学科  氏名:白井暁彦

1.    研究の目的

本研究「多重化による合理的配慮対応・教育用ディスプレイシステムの開発」は.多重化ディスプレイを教育・トレーニング用途に使用する場合の特性を明らかにすることを目的としている.従来の情報保障・情報アクセシビリティの向上といった一方通行の技術から,合理的配慮における障害者と非障害者の平等性,特に演習系講義やグループワークといった同時双方向性の必要となるシチュエーションにおける,複数のソリューションの融合による,あらたなコンセプトの合理的配慮ソリューションを提案する.

2.    研究の必要性及び従来の研究

本研究が実施された2016年4月より,「障害者差別解消法」が施行された.この法律は国連「障害者権利条約」の日本での批准に向けた「障害者基本法」の改正および「障害者差別解消法」による一連の法整備である.障害者差別解消法の理念として,障害(disability)に基づく差別を禁止し,平等な機会,待遇などを保証するなどの「合理的配慮」が提供されることにある.ここでの「合理的配慮」とは「障害者から何らかの助けを求める意思の表明があった場合の,負担になり過ぎない範囲の社会的障壁を取り除くために必要な便宜」と定められており(同法第2条),同様の配慮はアメリカにおいては「リハビリテーション法」で定められており,具体的にICT技術における配慮について条項がある(第508条).これによると,アメリカ政府機関が所有する電子技術や情報技術は,身体障害を持つものも等しく使えることを条件としており,様々なバリアフリー技術の研究開発や社会展開が望まれている.この法整備によって,義務ないしは努力目標として制定されており,日本企業においてもグローバルで商品展開をする場合は当然考慮しなければならない.

我が国における合理的配慮の整備および社会理解は,上記のような法整備の遅れもあって世界的には遅れをとっている.国内での情報のアクセシビリティについての研究や整備は,点字化,音声化,拡大文字化,出版物と図書館の複製変換サービス,オーディオブック,DAISYや「サピエ」といった音訳化,EPUBなどの電子出版形式が中心に実施されており,筑波技科大の研究が特徴的である.一方ではその研究成果は個々の障害に寄りそう研究であることが多く,一般化は難しい.例えば会議においては視覚・聴覚の障害に対して情報保障といった話者のテキストを書き起こす活動が行われている.近年ではモバイル機器による集合知や機械学習技術の貢献もあり,音声認識ソフトウェアの進歩がめざましいが,実際にはこれらの要素技術は合理的配慮に向けた基盤となる一般化されたシステム,ソリューション,展開方法論が必要となるが,これまでのアプローチのままでは「健聴者→聴覚障碍者」という組み合わせに対しての一方通行のソリューションでしかない側面は否定できない.つまり日本国内において,従来のバリアフリーやユニバーサルデザインという既存の概念とは別に,合理的配慮という障害者への情報保障のための新たな概念への理解・周知・対応が必要になる.

本学においても,障害者差別解消法にそって2016年度より合理的配慮が実施されている.講義系科目であればノートテイカーによる情報保障である程度の配慮は行えるが,プログラミングなどの演習系科目や,就職活動やセミナーのようなグループワーク,卒研指導のような未知の対話と実験によって構成されるアクティブラーニングでは,より幅広い利用シーンや,障害者からみた情報空間を想定して,他のユーザ(いわゆる健聴者・教授者など)との同時・双方向性を踏まえた「多様性」を考慮することが,今後の合理的配慮のためのICTソリューションに求められると考える.

本研究では,このような社会的背景に沿って,教育機関や企業において,従来の「話者から聴講者」の一方通行のサポートを目的とした技術に加え,演習,自発的な学びといったシーンにおける,合理的配慮のためのICTソリューションを提案する.

 

3.    期待される効果

提案の基盤となる技術は,第4世代多重化不可視映像技術「ExPixel」である.本技術は,従来からも多言語の同時表示や,「2x3D」方式による立体盲と呼ばれる立体視知覚が十分でない,もしくは難がある視聴者と,通常視聴が可能である視聴者を同時に成立させることができるソリューションとなる可能性が期待できる.

2016年度,研究プロジェクト開始時,液晶フラットパネルディスプレイでの多重化不可視映像を実現する第4世代不可視技術「ExPixel」,そして偏光メガネ等のデバイスの装着が不要な,多人数視聴を可能とする第5世代多重化技術「ExField」が実現していた.「ExPixel」は民生品のパッシブ3D液晶を使用したハードウェアの改造不要な多重化不可視映像技術であり,CPUベースのコンバーターツール,Unityで動作するGPUベースのリアルタイムシェーダー,FPGAベースのリアルタイム変換ハードウェアとしての実装に加え,教育やビジネスの現場に広く利用できるマイクロソフト「PowerPoint」のアドインとしての実装「ExPixel Generator」を,富士通SSLと共同で開発を行っているが,合理的配慮を想定とした聴覚障害者や他の健聴者との講義のハイブリッド化には一定の効果を期待できつつも,定量的・定性的データは存在していなかった.

もうひとつの核となるソリューションが音声認識ソフトウェアである.本研究では株式会社 富士通ソーシアルサイエンスラボラトリから発売されている聴覚障害者支援を目的とするネットワーク対応の口述筆記ソフトウェア「LiveTalk」との連携を行う.

多重化技術と音声認識ソフトウェアの統合により,講義や演習,グループワークなど,複数人が情報を共有する場において,発話者の発言を音声認識し,即時テキストに自動変換して複数のパソコン画面に表示することで,参加者全員が双方向・リアルタイムに情報を共有できる環境の構築が期待できる.

 

4.    研究の経過及び結果

研究初期は白井研究室・菊崎駿介,鈴木久貴ら,そして富士通グループの障害者雇用の中心にある富士通ラーニングシステム社と協力し,聴覚障害および合理的配慮の現状について,また「Live Talk」を通した企業における先進的取り組みを学ぶ時間に充てた.

この予備調査により,本学でも行われているノートテイカーによる口述筆記には,演習やグループワークにおいてはいくつかの問題があることが発見できた.まず「あと10分です」といった進行に関わる重要な音声情報が伝わりづらいこと.この情報が伝わらないことで障害者には「(何故かわからないが)突然周囲が慌て始めた」といった情報格差を産む.また聴覚障害者が集まる職場では「健聴者が障害を生む」という現象も発生することが理解できた.健聴者のほとんどは「手話難聴者」であり,そもそも聴覚障害者どうしの協働であれば問題にならない環境も存在するということである.「音声認識の誤認識」をどう捉えるか?についても知見ができた.同音異義語がある日本語においては,音声認識ソフトウェアの認識率は理論上100%にはならない.誤認識を修正することは理解度を上げるが,リアルタイム性を損なう.そして,多くの誤認識は他の健聴聴講者にとって「笑い」のタネになり,話者自身が集中できない.一方で,誤認識は全く不要ということではなく,むしろ聴覚障害者にとって必要なのは,要約筆記ではなく口述筆記であるという.要約されると,細かなニュアンスが伝わらず,要約者の意思が入る.例えば健聴者であるノートテイカーには不要に感じる「あー」「えっと…」といった感動詞・感嘆詞も,その場の雰囲気を理解するためには重要な情報であるという.またノートテイカーによる情報保障は「場所とタイミングが一致しない」という問題点があるという.例えば「ここが重要」と話者が示す情報がテキストに変換された時には,すでに話者はその場所を指し示してはいない.このような場所とタイミングの不一致は,演習,特にプログラミング系講義などでは特に必要とされる.

以上のような予備調査から,講義や演習などの話者(教員)の音声は音声認識ソフトウェアのような自動化ソリューションも十分に貢献の可能性はあるが,一方では,誤認識は完全に解消されるわけではなく,健聴者に表示すれば笑いのタネになってしまい,講義の進行を妨げる.クローズドキャプション,テレビの「字幕」ボタンのように選べるなら許容されるが,全員には不要な情報であり,多重化不可視技術やセカンドディスプレイといった方法を比較して検討する必要性があることがわかった.

 

次に多重化技術と合理的配慮の適合性と社会理解を図る目的で,フィールドテストを実施した.2016年6月18日,本学主催にて横浜・青少年センターにおいて実施された小学生向け科学イベント「科学のひろば2016」において,本学指定のヒト倫理審査(承認番号20160920-13)および同意書を取得の上,PowerPoint Generatorを用いた実験を実施した.合理的配慮に関して教育向け授業支援手法を提案し,その評価をクイズ形式のプレゼンテーションを用いて公開実験で実施した.一般参加者の4歳から9歳の男女56人を対象に多重化プレゼンテーションを行い,全4問を通して,それぞれ「ヒント」,「正答」,「ルビ」を多重化提示した場合について,またその画質についてアンケートによる主観評価を行なった.結果としては,ルビとヒントにおいて効果が高いことが可能性として示唆された.

続いて研究室内の実験環境において「ExPixel Generator」を用いた教育向け授業支援手法について引き続き詳細の評価実験を実施した.学内の学生12名,教員1名を対象にSPI試験対策本から15問をスライド化して使用し,「ヒント」,「正答」,「メガネなし(コントロール条件)」の提示を行い,アンケートによる主観評価,メガネ使用時間による客観評価,15問のSPI試験・非言語問題3セッション試行を通した正解数の変化による学習成果の客観評価を調査した.主観評価は偏光メガネの使い方を理解していなかった被験者を除くN=55 (人),「ルビ」が70.7%で最も役に立ったと評価された.正解数の変化による客観評価は,実験を完了しなかった被験者を除くN=10 (人) で,{ヒント, 正答, メガネなし}={3, 4, 3},最も正解数が多かったのは「正答」,次いで「ヒント」.ただし「正答」は第2セッションから正解数の変化が見られなかった.メガネ使用時間による客観評価は,第2セッションでは「ヒント」のメガネ使用時間が一番長く,第3セッションでは「ヒント」,「正答」ともに時間が減っていた.ここまでの結果は「多重化不可視映像技術(第4報):多重化不可視映像技術による授業支援手法の提案」として,第21回 日本バーチャルリアリティ学会大会(2016/9/14)[1]において発表を行った.
続いて,多重化不可視技術と視線トラッカーによる評価システムを開発した.視線トラッカー「Tobii EyeX」と「ExPixel FPGA」を同時使用することで,被験者が画面中のどの場所を注視しているか,被験者自身の注視を引かずに測定することが可能になった.この技術により,ゲームシステムやその習熟を評価可能になった「RTSゲームのプレイログ分析によるプレイヤー養成システム」としてエンタテインメント・コンピューティング・シンポジウム2016にて発表を行なった (2016年11月5日)[2].

 

本研究プロジェクトの最終形態として上記の「ExPixel」,「LiveTalk」,「Tobii EyeX」を統合し,ノートテイカーを補助する「ITハイブリッド型合理的配慮手法」を提案し,実際の演習授業で評価を行なった.本学の情報メディア学科 2年生後期必修科目「情報メディア基礎ユニット」を受講する聴覚障害者 (等級2級) の学生とPCノートテイカーを対象に,全15回中3回視線データによる客観評価を実施し,視線データによる客観評価,カウンタによる主観評価を行なった.詳細については,KAITシンポジウム2016 「多重化不可視映像技術による合理的配慮・授業支援手法の提案」(2016年12月10日)において報告している[6].

5.    今後の計画

本重点研究により,合理的配慮という社会実装を達成した意味は大きい.また関連した研究成果として,基盤技術としてのExPixelおよびExFieldの基盤技術[4]やツール・応用開発[5]と並行し,被験者のアテンションを引かない視線評価ツールを構築し[2],ゲームの習熟評価や,人工知能との協調作業によるを上達支援ツールを開発できた.特に「A.I.See: 多重化不可視映像技術を用いたボードゲームプレイ上達支援ツール」[3]では,アナログボードゲームである将棋をコンピュータビジョンで認識し,将棋AIにより最善手を解析し,多重化不可視画面にて表示する.人工知能と人々の理解と信頼,協調作業とその使われ方についての研究,メディアアート作品としてのメッセージ・意義も大きい.

6.    研究成果の発表

[1] 菊崎 駿介, 鈴木 久貴, 白井 暁彦:多重化不可視映像技術(第4報):多重化不可視映像技術による授業支援手法の提案,第21回 日本VR学会大会, 4 pages, 2016/9/14

[2] 榊原 諒, 白井 暁彦:RTSゲームのプレイログ分析によるプレイヤー養成システム, エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2016論文集,2016,42-45,2016/11/05

[3] 古田 真緒 , 白井 暁彦:A.I.See: 多重化不可視映像技術を用いたボードゲームプレイ上達支援ツール, エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2016論文集,2016,52-54 ,2016/11/05

[4] 鈴木 久貴,山口 裕太,須貝 孝明,白井 暁彦:裸眼多重化映像技術(第1報):裸眼多重化映像生成アルゴリズム“ExFeild”,第21回 日本VR学会大会, 4 pages, 2016/9/15
[5] 山口 裕太,鈴木 久貴,須貝 孝明,白井 暁彦:裸眼多重化映像技術(第2報):ExFieldを利用したテーブルトップ型ARゲームシステム -DualDuel-,第21回 日本VR学会大会, 4 pages, 2016/9/15

[6] KAITシンポジウム2016 「多重化不可視映像技術による合理的配慮・授業支援手法の提案」,2016/12/10

 

KAITシンポジウム2016(2016/12/10) 「多重化不可視映像技術による合理的配慮・授業支援手法の提案」ポスター&デモ

平成25年度重点配分(研究)成果報告書

研究課題名

多重化映像と非装着センシングによる対話支援型知能化映像システム
(③多重化隠蔽映像の高機能化と教育向けプラットフォームの開発)

目的基礎研究,全体計画:3カ年計画/本年度:3年目

研究者名

研究代表者
情報メディア学科 白井 暁彦
研究分担者
情報メディア学科  谷中一寿,佐藤 尚,坂内祐一,服部 哲,中村隆之,小坂崇之
情報工学科 大塚 真吾
工学部 機械工学科 佐藤 智明

1. 研究の目的

本研究「多重化映像と非装着センシングによる対話支援型知能化映像システム」の大目的は、多重化隠蔽映像を単なる新奇な映像情報メディアにとどまらせず、幅広い応用の分野を開拓し、研究分野や社会との接点を強固とすることである。

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<本年度の目的・目標>
平成23年度「①基盤ソフトウェアの研究」,平成24年度「②可視化と情報表現基盤技術」を集中して推進した最終年度となる本年度は,特に「③多重化隠蔽映像の高機能化と教育向けプラットフォームの開発」として,次の研究成果を「高機能化」と広い意味での「教育向け」と明確に設定し,新しい体制を加えながら,担当する各分野において総合的な成果をアウトプットしていくことを目標とした.

研究の必要性及び従来の研究

平成24年度の研究提案から,従来の3つの研究課題に加え,以下のような研究課題と体制としている.
非装着空間センシングによる大規模データに特化したデータ圧縮格納・イベント抽出方法(白井・大塚・小坂)
分散型センシングシステムにおける知能的な意味抽出手法(白井・大塚・小坂)
眼鏡なし立体ディスプレイを応用した多重化映像システムによる対話型教育体験空間の創出(白井・谷中)
HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を用いたウェアラブルメディアとその評価方法(坂内)
分散型センシングデータを用いた仮想空間と実空間の効果的な実験・演出手法(服部哲)
各体制は中心となる研究者であり,学生・研究員と協働しながら相互にシナジーをとって活動している.また定期的に研究会を開催することで,横断的な成果の共有を行なっている.
研究の目標は個々の年度において以下のようなマイルストーンを設定して推進している.
〔H23A〕分散化された赤外線レーザセンサからのセンシングデータの効率の良い格納方式の開発
〔H23B〕大規模なセンサデータから多様なイベントの抽出を提供するAPIの開発
〔H24A〕オートステレオディスプレイ向け多重化映像レンダリングエンジンの開発
〔H24B〕フィジカルコンピューティングを用いたハイブリッドセンシング
〔H24C〕多重化隠蔽映像システムの高度化およびコンテンツ制作手法の確立
〔H24D〕ヘッドマウントディスプレイを用いた基本システムの開発とハイブリッドシステムセンシングとの融合
〔H24E〕オープンキャンパスを用いた複数空間を移動するユーザトラッキング手法
〔H25A〕コミュニケーションモデルを獲得する知能化エンジンの開発
〔H25B〕パブリックスペースでの実証実験
〔H25C〕学内外での展示における実践的評価

上記の研究のロードマップに対し,以下のような研究計画と方法を特色としている.
<研究期間全体の技術的成果>
平成23年度 多重化映像(第1世代)から多重化隠蔽映像(第2世代)へ
平成24年度 多重化隠蔽映像の動画化による応用性・インタラクティビティ向上
平成25年度 より「高機能化」(第3世代),「教育向け応用」の開発へ
<研究手法の開拓および成果の評価方法>
ア・ACMなど国際評価の高い会議・ジャーナルでの採択
イ・メディアプレゼンスの高いイベント,雑誌,TV等でのデモンストレーション
ウ・研究成果の一般,企業へのアウトリーチ活動
エ・プレスリリースの発信によるプレゼンスの向上
オ・大学院生,学部生の積極的な参加による研究基盤形成

期待される効果

新体制として加わった中村,佐藤(尚)らの協力により,教育を通し成果技術の普及をはかり,学生の自由な発想を活用したゲームシステムへの応用が促進される.佐藤(智)の参加により,CADデータ可視化の利用分野を開拓できる.

研究の経過及び結果

本年度は最終年度ということもあり,基盤技術の研究に加えて,研究成果の一般への周知普及および産学連携への展開に特に力を入れた.Laval Virtual 2014において「ZZZoo Pillows」および「Manga Generator」の2件の発表を行った(予算支出は前年度).Manga GeneratorがAwardで受賞.国内最大の動画共有サービス『ニコニコ動画』を運営する株式会社ドワンゴから招待され「ニコニコ超会議2」(参加者10万人)にて多重化隠蔽映像を『ニコニコメガネ』として展示し,幅広い層に反響を得た.ACM SIGGRAPH 2013において「KinEmotion」を発表,ゲーム開発者会議「CEDEC2013」において,「Manga Generator」を発表.経産省「Innovative Technologies 2013」において我が国の優れたコンテンツ技術であることが認められ,DCEXPO2013(日本科学未来館)において展示を行った.佐藤(智)によりエンジン3Dモデルを「2x3D」において展示,エンタテイメント以外の教育的コンテンツを示した.
多重化隠蔽映像は谷中・白井により,第3世代である液晶プロジェクタの知見を活用し,フラットパネルによる多重化隠蔽映像の実験上の成功を確認した.

5. 今後の計画

多重化隠蔽映像はフラットパネルでの実現を確実にし,第4世代として継続する.なお,名称は「多重化不可視映像」として普及展開を図る.
本重点研究の研究成果は一般財団法人高度技術社会推進協会(TEPIA)に認められ,平成26年度より「Manga Generator」および「スクリッター」として常設展示されることが決定した.モーション認識アルゴリズム,多重化不可視映像およびレーザーセンシングのフィールドテストを実施して新たな知見を得たい.

6. 研究成果の発表

21件の学術外部発表,うち3件の海外発表.
<受賞>
・「Manga Generator」フランスLaval Virtual Award 2014(リアルタイムキャラクター&バーチャルワールド賞)
・「2x3D」,経済産業省「Innovative Technologies 2013」
・「マンガ没入型エンタテイメントシステムの可能性」,電子情報通信学会HCGシンポジウム2013「最優秀インタラクティブセッション賞」,「オーガナイズドセッション賞」
・「WebSocketを用いたスマートフォン上でのエンタテイメントコンテンツ閲覧時のリアルタイム行動分析」,エンタテインメントコンピューティング2013(芸術科学会オーガナイズドセッション ベストプレゼンテーション賞)

<取材> (主要なもの)
◆DigInfoTV(英語)
・「2x3D lets viewers watch 2D or 3D movies on the same screen simultaneously」,November 22, 2013, 27,488 views,http://www.diginfo.tv/v/13-0093-r-en.php
・「Manga Generator lets you step inside a Japanese manga comic」,August 26, 2013, 82,425 views,http://www.diginfo.tv/v/13-0062-r-en.php
◆DigInfoTV(日本語)
・「2D+3D互換の多重化ディスプレイシステム」,2013年11月13日, 34,581 再生,http://jp.diginfo.tv/v/13-0093-r-jp.php
・「漫画の世界に入り込む『Manga Generator』」,2013年08月23日, 29,192 再生,http://jp.diginfo.tv/v/13-0062-r-jp.php

<学術発表リスト>
[K1] Shunsuke Yanaka, Motoki Ishida, Takayuki Kosaka, Motofumi Hattori, and Hisashi Sato. 2013. Resolution of sleep deprivation problems using ZZZoo Pillows. In Proceedings of the Virtual Reality International Conference: Laval Virtual (VRIC ’13),ACM, New York, NY, USA, Article 25 , 2 pages.
[K2]谷中俊介, 小坂崇之, 服部元史:抱き枕「ZZZoo Pillows」を用いた安心感の提供,研究報告デジタルコンテンツクリエーション(DCC), 2013-DCC-4,vol.6,pp.1-4, 2013-06-20.
[K3] Shunsuke Yanaka, Takayuki Kosaka, and Motofumi Hattori, ZZZoo pillows: sense of sleeping alongside somebody, In SIGGRAPH Asia 2013 Emerging Technologies (SA ’13). ACM, New York, NY, USA, Article 17, 1 pages, 2013.
[K4]谷中俊介, 小坂崇之, 服部元史:ZZZoo Pillows:呼吸感と体温といびきの提示による安心感を与えるための抱き枕の研究,エンターテインメントコンピューティングシンポジウム(EC2013),pp.178 – 181 2013.9.17
[N1] 中村隆之, 川井高浩, 堀雄武, 田口裕起, 白井暁彦, 佐藤尚: “自作アーケードゲーム「アオモリズム」開発を通じた エンタテインメントシステム開発教育の実践”, 日本デジタルゲーム学会 デジタルゲーム学研究, 9pages, 2014/03/09.
[O1] 佐藤 充・白井暁彦・大塚真吾,「測域センサデータの可視化」,電子情報通信学会ヒューマンコミュニケーショングループ,HCGシンポジウム2013, pp.476-478, 2013.12.18
[S1] Yuto NARA, Wataru FUJIMURA, Yukua KOIDE, Genki KUNITOMI, Akihiko SHIRAI, “KinEmotion: Context controllable emotional motion analysis method for interactive cartoon generator”, ACM SIGGRAPH 2013 Posters,pp.75, 2013/7/21.
[S2] 白井 暁彦, 小出 雄空明, 奈良 優斗, 藤村 航, “姿勢評価によるリアルタイム感情推定を特徴とする動的マンガ生成システム「Manga Generator」”, CEDEC2013, 2013年8月21日.
[S3] 北田大樹,白井暁彦:スマートフォンの加速度センサを用いた微小不随意運動検出による動画視聴時の笑い評価手法, 第18回 日本バーチャルリアリティ学会大会論文集, pp. 162-165, 2013年9月18日.
[S4] 藤村航,小出雄空明,奈良優斗,白井暁彦, “VR エンタテイメントシステムのためのリアルタイムマンガ風画像生成シェーダーの開発”, 第18回日本バーチャルリアリティ学会大会,pp. 216-219, 2013年9月18日.
[S5] 小出雄空明,國富彦岐, 藤村航, 奈良優斗, 白井暁彦: “マンガ没入型 VR エンタテイメントシステムにおけるコンテンツ制作手法”, 第18回日本バーチャルリアリティ学会大会, pp.552-555, 2013年9月20日.
[S6] 北田大樹,白井暁彦: “WebSocket を用いたスマートフォン上での エンタテイメントコンテンツ閲覧時のリアルタイム行動分析”, エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2013論文集, pp.117 – 122 , vol.2013, 2013年10月4日
★芸術科学会オーガナイズドセッション ベストプレゼンテーション賞
[S7] 國富彦岐,石川 晃,田所 康隆,白井 暁彦: “年齢層とゲーミングデバイスの違いによる面白さの比較調査”, エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2013論文集, pp.111 – 116, vol.2013, 2013年10月4日.
[S8] 田所康隆,藤村 航,北田大樹,白井暁彦, “エンタテイメントシステム展示を対象とした質的評価ツールの提案”, エンタテイメントコンピューティング2013, vol.2013, pp.107 – 110, 2013年10月4日.
[S9] 石川晃,小西瑞輝,國富彦岐,田所康隆,白井暁彦: “スマートフォンを用いた実世界指向パーティゲームの提案”, エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2013論文集, pp.103 – 106, vol.2013, 2013年10月4日.
[S10] 小出 雄空明, 國富 彦岐, 藤村 航, 奈良 優斗, 白井 暁彦: “マンガ没入型エンタテイメントシステムの可能性”, 電子情報通信学会ヒューマンコミュニケーショングループ HCGシンポジウム2013, pp.208-211, 2013年12月18日.
★電子情報通信学会ヒューマンコミュニケーショングループ HCGシンポジウム「最優秀インタラクティブ発表賞」受賞
[S11]小出 雄空明, 國富 彦岐, 藤村 航, 奈良 優斗, 白井 暁彦, “学生VRコンテストを起点としたVRエンタテイメントシステム開発とその報告”, 第5回横幹連合コンファレンス, 2pages, 2013年12月21日.
[S12] 白井 暁彦,“3Dディスプレイに付加価値を与える多重化隠蔽映像技術”,応用物理学会・日本光学会・微小光学研究グループ,第131回微小光学研究会招待講演,6pages, 2014年3月5日.
[S13] 藤村航, 小出雄空明, 國富彦岐, 田口裕起, 鈴木久貴, 白井暁彦: “直線偏光による多重化隠蔽型ハイブリッド3Dディスプレイにおける画質評価”,映像情報メディア学会技術報告 立体映像における人間工学的研究,及び立体映像技術一般(ヒューマンインフォメーション研究会共催) , pp.35-38, vol.ITE-38, no.11, 2014.2.27
[S14] 小出雄空明,藤村航,國富彦岐,田口裕起,鈴木久貴,白井暁彦: “液晶フラットパネルにおける多重化隠蔽映像の試行と実現”, 映像情報メディア学会技術報告 – 立体映像における人間工学的研究,及び立体映像技術一般, pp.39-40, vol.38, no.11, 2014-02-27.
[S15] 田口裕起,鈴木久貴,小川耕作,白井暁彦: “HMD装着時における首によるジェスチャ認識 ~ 首可動域の特性 ~”, 映像情報メディア学会技術報告 ヒューマンインフォメーション研究会「視聴覚技術,ヒューマンインタフェースおよび一般」, pp. 9-11, vol.38, no.10, 2014年3月4日.

(以上)